M11:00




寂しい夜



夢中で求めた

pm11:00





幸せな朝



微笑み合った

AM11:00









「…ふ〜わ」

耳元で聞こえた小さな愛しい声。

名残惜しいと思いつつも意識は眠りから覚醒していき。

甘い睡眠を奪われ、代わりに手に入れたのは、瞼を開いて映った、愛しい人。

「おはようさん」

隣に寝転んだまま、まだ寝起きの気だるそうな声。

その姿を暫し見つめ、おはよう、と返す。

「呼んだら起きるかなぁ思って」

珍しく不破の方がお寝坊さんやったな、と楽しそうに話す成樹を引き寄せ抱きしめると、慌てたように成樹が身を捩る。

心なしか頬が紅潮しているようだった。

「…どうした?」

「俺ら服着てへんねんてっ」

意外なその言葉に、半分無意識で、半分悪戯に、抱きしめていた腕の片方を腰までずらしてみた。



怒られた。







もう朝日とも呼べない太陽の暖かい光が差し込む窓を、佐藤が開けた。

ここ最近見られなかった、雲一つ無い快晴と呼ばれる青い空。

「ええ天気やで!」

嬉しそうに振り返った佐藤の瞼に口付ける。

くすぐったいと笑う姿が愛しかった。

昨夜、佐藤を抱いたまま枕として提供していた左腕の痺れまでもが、心地良い。

「なぁ、不破」

再び空を見ていた佐藤が、小さな背伸びをして振り返った。

「折角早よ起きたんや。たまには遠出せぇへん?」

「構わないが。何処へ行きたい?」

「せやな…」

暫く目的地を考え唸っていた佐藤が答えを出す。

「…海?」

にこりと笑って、語尾を上げて。

「この時期にか?」

予想もしなかった答えに聞き返すと。

「さすがにこの時期やと人少ないやろうけど、冬に海見たがる物好きもおるんやで」

その真似っこ。

その屈託無い笑顔は、今日の天気に映えていた。





鼻先を掠める潮の匂い。

肌に刺さるような冷たい風。

「うわ、寒い〜っ」

「もっと厚着しろと云っただろう」

着ていたコートを脱ぎ、頭から被せる。

「へ?…って、不破が寒いやろ?返す…」

「その格好でうろうろされる方が、見ていてよっぽど寒い」

「…ごめんなさい」

以後気を付けます、と苦笑しながら渋々着衣する。

まだコートに自分の体温が残っていたのか、満足したように佐藤は笑った。

温かい、と。



「な、こっち!」

佐藤に手を引かれるままに浜辺の隅に座り込む。

「不破っ、ほら」

隣に座った佐藤が海を指した。

細くて綺麗な指が指し示す方向で。



空と海が、一つになっていた。





「寒いけど、空気澄んどるから夏よりも綺麗やろ?」

目を輝かせて得意気に笑う姿に、加速する気持ち。

気が付けば、腕の中に力強く抱き寄せていた。




見慣れている筈のものを新鮮なものに変えてくれる、佐藤の柔軟な感受性。

そして。

大人びた言葉遣いや態度に混ざる、子どものような清澄な心。

きっと、誰よりも純粋で繊細なのだと思うことが度々ある。



「あ」

こちらを振り返った佐藤が、不意に驚いた顔をする。

「どうした?」

問いかけに、どこか不思議そうな曖昧な笑みを、やがて満面の笑みに変えて佐藤が言葉を紡ぐ。



浜辺の側の民家から、11時を知らせる柱時計。

どこか懐かしい、その音と重なって。





不破な、今、

今日初めて笑ったで



その表情と言葉を、体ごと抱き寄せた。









君が傍にいるだけで


僕は進むことが出来て


また新たな力を手に入れられるんだ




だからお願い


僕の傍にいてくれないか







君が


好きだから



















*****2002/12/25
何とか終わりました、終わらせました!笑。
完全不破大地視点でのストーリーでした。
テーマは『やんちゃなシゲと飼い主のお散歩』笑。
私のシゲ好み(何それ)の中の1つに子どもっぽくて周りを振る舞わす腕白坊主!がございまして、笑。
可愛いシゲを目指してみました。でも玉砕した気分になったので勝負に負けました。
ハル的「AM11:00」、楽しんでいただければ幸いですvv(これで何を楽しめと、苦笑。)