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恋をした
俺はお前が好きだ。 そう告白されて、3日が過ぎた。 「入っていくか?」 突然振り出した大雨に部活は中止。 それならさっさと帰ろうと靴を履いて玄関へ出てみるが、大粒の雨が地面をたたきつける勢いで降り続く。 小雨になるのを待つのも面倒だし、近くのコンビニまで駆け込んだとしても、傘を買える余裕は無い。 しゃあないか、と残りの選択肢を選び、ずぶ濡れ覚悟で走り出そうとした、その時だった。 聞き覚えのある声に降り返ると、学校始まって以来の天才児にして問題児。 不破大地、だった。 「不破〜、ええとこ来たなぁ」 不破を見て成樹はにこりと笑い、甘えるように、入れてってや、と頼む。 片手を顔の前で掲げる仕草に、不破は一瞬だけ眩しそうに目を細めていた。 「不破のおかげで濡れんですんだわ。おおきにな」 不破がさす傘の中で、不破の荷物を持って歩きながら、成樹は礼を云う。 先程まで、どちらが傘を持つかで小さな闘争を繰り広げていた。 結局、入れてもらうのだからと主張する成樹に、傘の持ち主と身長で対する不破が勝利したのだった。 なら俺は荷物持つわ、と成樹は不破の鞄を奪い取って笑ってみせる。 それなら傘を持て。 自分が荷物を持つ、と不破が妥協案を出すが。 もう傘さす気も荷物返す気も無いで。 と成樹は笑った。 あまりにも楽しそうな姿に、不破は不承不承了解したのだ。 「この傘、学校に置いてたん?」 「否、今朝持って来た」 「雨降るて天気予報のお姉さん云うてたんや?」 この質問にも、否、と不破は首を振る。 「出かけ際、空を見たら降りそうな気がしただけだ」 「…めっちゃ晴れてた気ぃすんねんけど」 不思議そうな成樹に、不破は何でも無いようにサラリと云う。 「西側の空が微かに暗かったからな」 呆気に取られた成樹は、改めて不破の奇特さを思い知る。 だが、その全てが不破らしくて、納得してしまうのだ。 「ほんならお天気お兄さん目指してみるんはど?」 そんな事を自分で云っておきながらも、天気図を説明する不破は、学者が研究会で図説しているようにしか見えないと、吹き出しそうになるのを堪えていた。 だが。 「それは考えた事が無い」 真面目な不破の返答に、成樹は盛大に笑い出した。 「ほなな。また」 わざわざおおきに、と笑い掛けると、不破は頷き草晴寺の敷地を門へと歩きだした。 不破が門を出るまではと成樹は軒下から不破の後ろ姿を見送る。 だが不意に微かな違和感を覚え、それが何なかすぐに気が付いた。 不破…めっちゃ濡れとる。 不破のブラウスの右側が多量の水分を含み、変色していたのだ。 自分の左肩を見るが、殆ど濡れた形跡など無い。 雨に打たれ、服が濡れていくのに気付かない訳が無い。 つまり、意識的に成樹が濡れないようにと気を使っていたという事になるのだ。 あの、男が。 『クラッシャー』という異名を持つ、不破大地が。 「不破」 呼び掛けに振り返った不破に、成樹は言葉を紡ぐ。 「折角来たんやし、上がってや」 不破は暫し考えると、世話になる、と頷いた。 その時、不破は見た。 成樹の笑顔が、微かに変わった。 今までに見たどの笑顔よりも、柔らかくて、幼い子どものような、自然な笑みを。 「出せるんは緑茶かコーヒーだけやけどな」 思わず魅入るように見ていた不破は、ハッと我に返る。 あまり感情が表れない不破の表情が微かに変わったのを不思議に思いつつも、成樹は笑顔のまま話を続ける。 玄関へ招き入れ、タオルを渡し、自室へ案内する。 「曖昧な返事しかしてへんやった思て」 部屋の扉を閉め、着替えを差し出し、おおきにな、と濡れたブラウスを一度見る。 そして視線を不破の瞳へと移しながら。 聞かなくても理解しているだろう不破へ、改めて。 俺、不破の事、 めっちゃ好きやねん。 *****2002/12/31 はい、今日は不破大地のバースデーという事で(話は初夏辺りですが)、本館の「bud」に繋がるようなそうでないようなお話です。…。 毎年笛キャラの誕生日には、おめでとうと云い合う習慣が出来てしまってて笑えます。 まぁ、こんだけ分かりやすい日に生まれていれば忘れませんね、笑。 大地にプレゼントを兼ねて、シゲに「好き」って云ってもらいました。良かったね。 はい、自己満足です。いいんです。と、とりあえず! 不破大地、19歳おめでとう!愛してるよ!! |