Name
『ダイチ』
街中で耳元に突然届いた自分の名前。
日常で家族以外に呼ばれる事はほぼ、否、全くの皆無だろう。
空耳だろうか。
一応振り返ってみるも、やはりそこに知人はいない。
「ダイチ!」
すると今度ははっきりと声が聞こえ、そちらへ視線を向けると見知らぬ親子が視界に映った。
「ダイチ、お参りに行ったら帰りにお母さんとご飯食べよっか」
「うん!」
どうやら目の前にいる小学校低学年くらいの少年も『ダイチ』という名前らしい。
親子は手を繋ぎ、神社の方へと向かって歩いていった。
何気なくその様子を暫し見送り、視線を戻した不破は目的地へと向かった。
「不破!寒かったやろー」
自分の姿を見るなり中へと招く成樹に連れられ、会話もそこそこに成樹の部屋へ通された。
「ファンヒーターしかないねん。ここ座り」
既に起動していた機器から来る温風にコートの必要性が無くなったと、コートを脱いで壁際においた。
「や〜っと年末年始の忙しさから少〜し解放されたわー」
湯気の立ち昇るコーヒーカップを2つ、テーブルに置きながら成樹が言う。
かと思いきや、ドン、と背中に成樹の背中が遠慮なく寄りかかってきた。
そしてすぐにパラパラと聞こえる紙擦れの音。
自分を背もたれにしている住人が漫画か雑誌を読み始めたようだ。
「…重いぞ」
「ええやん。充電させてや」
不破セラピー、とくすくす笑う楽しそうな声。
それからまた、ページを捲る音が不規則に聞こえ始めた。
どうやら、暫くは動く気がないらしい。
背中越しに伝わる熱。
心から温まっていく熱。
その体温がひどく心地良く感じて。
勢いに任せて体をずらすと、
「おわっ!!」
支えの無くなった成樹は背中から畳に倒れこんだ。
「っつ――、不っ…!」
すぐさま反射的に起き上がろうとする成樹の体をおさえ、非難を紡ぐ口を自分の唇で塞いだ。
ピクッと驚きに揺れた体を包むように抱きしめ、金色の髪に指を絡めて。
そして、口付けを深める。
やがて落ち着きを取り戻したらしい成樹が、その刺激に応えた。
時間的にはほんの1、2分。
それでも合わせていた唇を離すと、成樹は酸素を取り入れようと小さな浅い呼吸を繰り返す。
「――成樹」
「っ!」
その耳元に、囁いた。
と、呼吸を忘れ驚き瞠った琥珀色の目で、成樹は不破を視界へ入れる。
やがてその瞳が懐かしそうに細められ。
そして、笑った。
「慣れてへんから、くすぐったいわ」
柔らかく笑み起き上がると、その目は真っ直ぐに不破を見つめた。
「……大地。…っ」
「…何故赤くなっているんだ?」
「うっさいわ!恥ずいねん!!」
「強制はして無いが」
しっかり赤みを帯びた顔で睨み付けられたところで、効果なんて無に等しい。
それを理解した成樹は、うー、と唸り、ため息をついた。
「…されたらお返ししてやりたなる自分の謙虚さが可愛くてしゃーないわ」
「珍しいものが見れた」
「黙らんかいアホーっ!!」
自分の名前に親しみを持った。
相手の距離が近付いた。
きっとそれは、他に無い、
魔法の、コトバ。
*****2006/01/08
呼び名って改めて変えてみると呼ぶとき結構恥ずかしいなぁっていうお話です。何笑。
もうお分かりですね、互いに名前で呼ばせたい衝動に駆られて書きなぐったものです。
文章もへったくれもない文字たちですが相変わらずの自己満足で突っ走りたいと思います☆笑。
お付き合い有り難う御座いました!
それではまたの機会に!(^-^)
タイトルはそのまま「名前」。