Spring
天気が良かったから、誘われるように家を出た。
深呼吸して春風をいっぱい吸い込んで。
ふらりと向かった河川敷。
その敷地を利用して作られた公園には一面の桜が咲いていた。
その一つ一つを見上げながら通り過ぎ、最後の一本で立ち止まる。
「今年もよろしゅうな」
去年より綺麗やでー、と咲き誇るその薄紅色を見上げ、懐かしそうに目を細める。
応えるように、吹き抜けた風と遊びながら、花びらが舞った。
「上はピンクで下は黄色やな」
その先には菜の花が咲きそろい、黄色の絨毯が敷き詰められている。
暫し考えた後その花々の中へと入り、座り込む。
花弁との距離の所為か、香りがいっそう強く、鼻を掠めた。
「座ると俺より背、高いなぁ」
そのまま寝転がると、空が、黄色とピンク、水色に広がった。
ぽかぽかと暖かな日差し。
耳に入る水のせせらぎ。
時折聞こえる羽音は蜜を求める蜂のものだろうか。
頬を優しく撫でる暖かい風に揺れる、桜と菜の花たち。
どこか現実味のない、淡く、柔らかな時間が流れていた。
「佐藤?」
心地良さに意識がまどろみ始めた頃、中学の頃より少し低く大人びた、でも耳慣れた声が降りてきた。
閉じていた瞼を開き、上半身を上げると、そこには。
自然と、口元が緩むのを感じる。
「よう見つけたなぁ」
「橋を渡っているときに歩いているお前が見えた」
「そか。…何や得したわ」
「何がだ?」
「んー、いろいろ?」
ふらりと歩いて見つけた春を堪能していたら大好きな声が聞けるなんて。
そんな考えに、何となく苦笑する。
「ホンマにやられとるな…」
「?」
「不破が好きやって事や」
ニッと笑ってみせると僅かに瞠目した不破が穏やかに笑う。
それだけで、また嬉しくなる。
「暇なら日向ぼっこせえへん?」
とんとん、と隣を促す。
花を掻き分け歩いてきた不破の肩に、甘えるように頭を預けると。
「あ」
ここにも、見つけた。
安心する体温と、不破の匂いに混じって。
「不破から、春の匂いがする」
自分と同じ、二人を囲む、花の匂い。
*****2008/03/20
春に限らず晴れた日はどこかへ行きたい衝動に駆られます。
ぽつぽつといろんな所で桜も咲き始めて、桜好きとしては嬉しいですねー!
地元の河川敷もホントに菜の花で黄色い絨毯が広がっています。
いつまでもこんな穏やかな時間を共有できる彼らであって欲しいです、笑。