before day




耳鳴りがする程の静けさに、目を覚ました。



寝起きで上手く働かない頭を動かし窓へと視線を向けると、漆黒の闇が光を侵食している。

時刻は明け方4時。

(……寒…)

重い瞼に視界を遮られると鋭くなる感覚が背筋を撫でる冷気を捉え、ぞくりと体が震えた。

思ったより体の冷えを感じ、体温の拡散を減らそうと体を丸める。

その時。

「どうした」

不意に、真後ろからの声。

「…寒い…って、なんでヒイロが居るんだ?」

首だけで振り返り、ヒイロの存在に単純に驚く。

「リビングで眠っている奴をここまで運んだら寝惚けられた上に連れ込まれた」

「…俺ですか」

「他に心当たりは無いな」

後ろからそっと抱き寄せられ、背中に伝わる心地よい体温。

「っ、ヒイ…」

「動くな。寒い」

温かい。

「…気配消して寝るなよ。さっき全然気付かなかったぞ」

「平和呆けか」

「うるせぇな」

この上ない程の心地良いその温もりに、ちくり、と心が痛んだ気がした。





触れる体温が、温かい。

心からの安堵感を、体全体で感じる。

この腕が手が、表情が、態度が、自分を癒してくれる。

いつも。いつでも。

どうしようもなく素っ気無く聞こえる言葉の中にさえ、大切にされていると自惚れてしまうようなニュアンスが混ざっている事に気付いたのは、そんなに最近ではない。

同時に。

満たされていく心に宿る暗い闇を覚えるようになったのも、そんなに遅くはなかった。





大切な物があった。

大切な者は失っていた。



大切な物を失いかけた。

大切な者を見つけ出した。



一人の時は良かった。

コロニーを守る。その理由だけで全てが成り立っていた。



同じ道を進む仲間が出来た。

同じ意志と力を持った人間の存在にが居るという事に、心強さを感じた。



失いたくない唯一無二の存在が現れた。

…何かが自分の中で変わっていった。



失うものが出来る前の自分は、あんなに強いと信じていたのに。



大切なものの存在は、全てを鈍らせていく。

それが命を持つものならば、尚更。



『何があっても、死なせたくない』

『そして自分も、死にたくはない』

『出来る事なら、共に、生きたい』



そんな思いが。



命さえも顧みない任務に、きっと支障をもたらすだろう。





でも。



それでも。



失くしたくないものが、ある。

見つけてしまった、ここは自分の掛け替えの無い居場所。

この温かい腕の中に包まれている。

そんな日々に、幸福、というものを感じている自分に気付く。

「ヒイロ」

向き直り、ヒイロの胸に顔を埋める。

冷えかけていた体を改めて抱きしめてくれる腕に、身を預けた。







そう。



きっと君に出会う為、





あの日から、



ずっと孤独を彷徨っていた。



















*****2007/01/02
やらかしました、イチニです、爆笑。
Wはホントに思い入れのある作品で、気がついたら出来上がってたという突発話。
二人とも自分一人でもやっていけるけど、こうやって寄り添ってくれてたらいいなと常日頃から思い抱いてます。
忙しい身ですからね、ええもう殺人的に、笑。
それでは、こちらでもまたお会いできることを願って。ありがとうございました。