start
向き合うと決めた。
自分にもう嘘はつきたくない、と。
前を見て、自分が出来る精一杯で道を拓いていく、と。
本気で心配して、本気でぶつかって、本気で心配してくれる人に恥じないように。
そして、過去の自分に、今、隣を歩いている人に、胸を張れるように。
『はい』
折り返した電話は、三度目のコールで繋がった。
「不破?電話くれてたんやって?どしたん」
『佐藤か。明日の練習だが、このまま雨が止まなければ中止だそうだ』
「あー、確かに結構降っとるしなあ」
『腕はどうだった?』
「おかげさんで完治しましたーっ。三角巾やっと外れたわ。右腕めっちゃ重いで」
先程まで吊っていた右腕を見ながら手を開いたり閉じたりしてみる。
指先は多少は使っていた所為か違和感は無いが、腕がとにかく重い。
「左手の三倍くらい重い気がするわ。やっぱ筋力落ちとるな」
『すぐに感覚も戻るだろう』
「せやな。…な、不破」
一呼吸おいて。
いつも通りに話せているだろうか。
「明日中止になったら遊びに行ってもええ?」
気付かせていないだろうか。
『構わないが』
「おおきに。ほな今から気合い入れててるてる坊主でも作るわ」
『それは晴れを願うためのまじないじゃないのか?』
「知らんの?逆さにして吊るすと雨になるんやで」
『…水野が泣くぞ』
不破の言葉に思わず吹き出した。
雨天祈願までして練習中止を望んだとバレたらきっと怒って呆れるだろう。
だけど。
「たまには泣いてもらお」
一日だけ。
あと、一日だけ。
明日不破に会ったら、今までの自分を覚えていて貰おう。
そして知ってほしい。
変わっていく姿じゃなく、変わった姿を。
また一歩、歩き出した自分を。いつか。
だから、ずるいの承知で先にちょっとだけ充電させてな。
全速力で、まっすぐに、駆けていくから。
*****2011/11/27
お好み焼き対決後、京都討ち入り前あたり。
シゲが本気でサッカーに向き合うと決めて動き出したのを見て当時感動したのを覚えてます。
あんなに逃げ回ってかわして、今が楽しければいい、みたいなどこか世界を斜めから見ていたシゲが、と。
今でも討ち入りのシーンを見るとホント胸が痛いというか泣きそうになります。まるで別人で。そして痛々しくて。
変わる難しさと大変さを乗り越える心の支えの一人に大地がいたらいいなと思います。